この度 KAYOKOYUKIでは、髙木大地(たかぎ・だいち)の画集「Daichi Takagi 2010-2022」を刊行いたします。
髙木はこれまで、「抽象」と「具象」の狭間を行き来しながらも 、一貫して「絵画」表現の可能性を探求し続けてきました。脈々と続く絵画の歴史に真摯に向き合い、その上で自らの絵画表現 を模索してきたその軌跡は、高木自身の言葉の通り、まるで螺旋階段を少しずつ登っているように思えます。
初期の静物や風景を解体し幾何学的に再構成した作品では、 線や面、形、色彩、テクスチャーといった絵画的手法を駆使し、 図と地のせめぎ合いや平面性と奥行きといった絵画の造形性を追求していきました。そして、変形キャンバスの作品やグリッド構造を持つ、より抽象度の強い作品へと展開していきます。 しかし、2018-19年のオランダ滞在を機に、髙木の制作は大きく展開しました。それまでの自らに課してきた方法や理論以上に、「見る」ことと「描く」こと、自分の直感を頼りに描くこと、という非常にシンプルな行為にあらためて取り組み始めたのです。そこには具体的なモチーフが導入され、以前の作品にはなかった絵画的情緒や物語性が加味されています。また、オランダ滞在は高木に自分が西洋とは異なる文化圏で生まれた日本人であることを再認識させました。近作では、西洋由来の油絵具を日本人である自分がどう扱うのか、東洋的・日本的な背景や美意識を念頭に置いた試みも展開しています。
本書では、彼の制作の根拠となるドローイングやスケッチの数々とともに、年代を追いながら、髙木絵画の変遷を辿ることができます。
Takagi's early works focused on deconstructing still lifes and landscapes and reconstructing them geometrically, using pictorial techniques such as lines, planes, shapes, colors, and textures. However, during his stay in the Netherlands in 2018-19, he began to engage in the simple act of "seeing" and "drawing," relying on his own intuition. He introduced concrete motifs and added a painterly emotion and narrative. His stay in the Netherlands also made him reaffirm his identity as a Japanese born in a culture different from the West. In his recent works, he has been experimenting with how he handles oil paints of Western origin, keeping in mind his oriental and Japanese backgrounds and aesthetic sensibilities.
In this book, you can trace the evolution of Takagi's art by following his work over the years, accompanied by his many drawings and sketches that form the basis of his creations.
全96頁 / 210 × 148mm / 発行: KAYOKOYUKI / デザイン: 木村稔将 執筆: 髙木大地, 小林康夫(東京大学名誉教授), 蔵屋美香 (横浜美術館館長) / 翻訳: 油野遼香(p.39, pp.87-92) / 写真: 岡野圭, 木奥惠三, Margot Montigny ※全文日英併記
96pages / 210 × 148mm / Published by KAYOKOYUKI / Design: Yoshimura Kimura Text: Daichi Takagi, Yasuo Kobayashi(professor Emeritus. The University of Tokyo). Mika Kuraya (Director, Yokohama Museum of art) / Translation: Haruka Yuno(p.39, pp.87-92) / Photo: Kei Okano, Keizo Kioku, Margot Montigny *Japanese and English texts